マルツ工房

石割桜が花咲き、わんこそばが重なり、鉄瓶が踊る!マルツ工房 その愛らしいデザインと心意気

メイド・イン・イワテの粋なヤツ! 岩手愛とセンスにあふれるマルツ・ワールド

盛岡在住の方なら一度は目にしたことがあるであろう、マルツ工房の商品。雑貨店にある缶バッジ・シール・Tシャツ・手ぬぐいや街角で見かけるポスター、ラッピングバスに至るまで、今や盛岡をモチーフにしたデザインと言えば「マルツ工房」と言っても過言ではない・・・そんな印象を受ける程、キャッチーで岩手愛に溢れています。石割桜が花咲き、わんこそばが重なり、鉄瓶が踊るTシャツや手ぬぐい。遊び心あるポップでキュートなデザインは、一度見ると忘れられないインパクト!目に入るたびにクスッと笑ってしまい、心がほぐれる「ゆるカワ」さが全開です。主なモチーフは岩手の名物。その中でも石割桜(い)・わんこそば(わ)・鉄瓶(て)といったメジャーなもの(3つの頭文字をつなげるとい・わ・て!)から「盛岡天満宮の狛犬」や「沿岸のホヤ」といったコアな存在も。岩手ならではの、岩手にしかないものを、重く野暮ったくならずにあくまでポップに粋に軽やかに表現する、そのセンスと岩手愛にしびれます。日常的に使ったり、部屋に飾ったり・・・岩手のお土産としても「堂々と渡せる!」と喜ばれています。そんなマルツ工房の商品を作っているのはいったいどんな人?

マルツ工房の全てを手掛ける職人・吉田つとむさん

マルツ工房の全てを手掛ける職人・吉田つとむさん。マルツ工房すべての商品を手掛けるのが、デザイナー兼・代表、吉田つとむさん。「手作りとか、肉筆とか人の温度が感じられるものが好きなんです。今って携帯とかパソコンとか全部同じ文字でしょ。僕自身、手書きの葉書がいいなって思うように、そういうことを大切にしたいんです。」という吉田さん。なるほど、マルツ工房のデザインもどこかほっとするような手作りの温もりを感じます。しかし、そのデザインを生み出す時は「身を削るような」生みの苦しみがあります・・・。マルツ工房は文字の一つ一つにおいても吉田さんのデザインです。「1つの商品を創り出す時は、数十パターンを作ります。そして、作った後は1度全て忘れてしまいます。お客さんは商品を見る時第一印象が全てだから、僕も一度全部忘れて、まっさらな状態になるんです。お客さんと同じ、初めて商品に出会うような感覚の中で本当に『良い!』と思えるものを最終的に選んでいます。」1つの商品を創るために、数十パターンも候補を作りだし、全身全霊で取り組む吉田さん。その姿勢はどこで培ったものなのでしょう。「デザインの勉強をしたことはありません。全部独学です。」「えっ!そうなんですか」吉田さんの話を聞くにつれ、創作のエネルギーのルーツとなる波乱万丈な人生に引き込まれました。

並外れた行動力!そのアグレッシブな人生

吉田さんは岩手・盛岡出身。高校卒業後、ラグビーの実業団で企業に就職しながらも退屈な日々に我慢ならず退社。その後、19歳の時にバイクで北海道から西表島まで日本一周の旅に出ます。「人の家に居候とキャンプを繰り返しながら旅を続けました。」なんともワイルドな経歴ですが、それからがまたすごい!21歳で単身アメリカへ。その理由はなんと「思いつき(!)」そして現地でハーレーを購入し、ノリで(!!)北アメリカ・南米の旅へ。帰国した後も日本は元より東南アジア、ヨーロッパ、アラブ、中米etc・・・と、20代から30代にかけて数えきれないくらい多くの国を旅します。「行きたいと思うけど、なかなか行けないですよね・・・」というまがりやスタッフに「行きたいと思ったらすでにどこにでも行けるんです。躊躇する方が不思議ですね。」ときっぱり。旅以外にもモトクロスのライセンスを取得したり(しかもバイク事故で顔面骨折した後に!)サーフィン・登山と、とにかく、並外れた行動力の持ち主です。

ずっと自分の道を探していた―。「俺の味は俺にしか出せない」そんな吉田さんが初めて「デザイン」をしたのは「南部鉄器」。

「家にMACがあったのでなんとなく南部鉄器を描きはじめたんですけど、この時生まれて初めて徹夜したんです。そして、完成した時、雷が落ちるような衝撃的な感覚があった。『自分がやりたいことはこれだ!!今までの経験は、全てこのためにあったんだ!!』と、心から思えました。」「ずっと自分の道を探していて、18年間、日本や世界を旅しながら色んな仕事を1つずつ経験していきました。中には好きだったんだけど、縁がなくて辞めざるを得なかった仕事もあります。でも、今考えると、デザインに興味を持ち出した時期と旅に出た時期って重なっていたなあと思います。外から見ないと分からないというか、実感できないものってありますよね?海外から見た日本のデザインの良さというものを海外に行って実感したんです。」そして、38歳の時に「生まれ育った岩手に恩返しがしたい」と単身盛岡にデザイン事務所「マルツ工房」を設立しました。デザインの根底にあるものは「ユーモアと正義」「全部のデザインに共通することは『ユーモア』と『正義感』。ユーモアは、思わずクスッと笑ってしまうような面白さ。正義感は商品に対する真面目さ。シンプルで笑わせて、子供からお年寄りまで喜んでもらえる、そんな商品を目指していつもデザインしています。」「今まで濃い人生を歩んできました。だからこそ、俺の味は俺にしか出せないと思っています。」

考えている暇があったらとりあえず動く!吉田さん流・復興支援

2011年3月11日。あの日、吉田さんは盛岡の事務所にいました。停電になった街の中、車のテレビで沿岸に大津波が来たことを知ります。翌12日の午後、回復した携帯電話に前日のメールが入りました。それは、壊滅した沿岸の町の友達からのSOS。13日にはバイク仲間と共に沿岸への山道をひた走り、山田町・大槌町へ。瓦礫の山、打ち上げられた船を越え、奇跡的に友人と再会することができ、生活物資を渡しました。当時の状況を考えるとこれはとてつもなく早い支援です。その後も被災地に必要物資を届けながら、内陸に住む人の「何かしたいけど何をして良いかわからない」という声に応え、500円が支援金となる「復興Tシャツ」を作ります。支援金が溜まると物資に変え、直接避難所に届けました。さらに、大槌の漁師さんの「漁に使うダルマ篭が足りない」という声を受け、その購入資金にするために新しく「沿岸スピリット」の手ぬぐいを制作しました。「『考えている暇があったらとりあえず動こう!』というのが自分の気持ちです。」と吉田さん。今後も被災地への支援を続けながら、オリジナリティ溢れる岩手モチーフをデザインし続けます。「ユーモア」と「正義感」に満ちたマルツ工房の商品。そばにあると心がほっとくつろいでほどける・・・そんな陽だまりのような、岩手の名物にしたい存在です。

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