銀物語

気仙大工の誇りが銀色に輝く今までにない職人気質アクセサリー

「お守り」としての聖なるシルバー

「シルバーアクセサリー」と聞いた時、どんなイメージを思い浮かべますか?繊細なもの、重量感のあるもの・・・。古代から人はシルバーを装飾品として身に着けていました。その歴史は、なんと紀元前3000年も前(人類最古の文明・シュメール人の時代です! )にまで遡れるといいます。銀は古くから「聖なる金属」と言われてきました。イメージとしては「純粋・無垢」の象徴。化学的にはヒ素化合物等の毒に反応して変色して危険を知らせてくれたり、殺菌効果も証明されています。そのため、身分の高い人の装身具や神聖な儀式の道具にあしらわれ、「お守り」として身に着けられてきました。現代でもシルバーアクセサリーは人気があり、様々なスタイルがあります。

これまでにないオリジナリティあふれるモチーフ

作者は岩手県・陸前高田でアートクレイシルバーの創作活動を続ける岡本啓子さん。デザインから手がけるそのモチーフは一風変わっています。「墨壺」や「のみ」― そう、岡本さんの代表作は大工道具です。「どうして大工道具をモチーフに?」「私の父は『気仙大工』でした。父の道具をアートクレイシルバーで作ってみたい。そう思ったことがきっかけです」元は自動車会社で製図を担当していた岡本さん。確かなデザイン力に加え、強い思いがありました。

気仙大工とは?

『気仙大工』とは、岩手県・陸前高田が発祥と言われる気仙地方の大工集団。民家はもちろん、神社仏閣、建具や彫刻までこなす高い技術力を持ち、その歴史は江戸時代まで遡ります。陸前高田は昔から「気仙杉」の産地。そのため木を製材する「木挽き(こびき)」が多く、木挽きは大工へと転職していきました。しかし、地元では大工の需要が限られていたので仕事は出稼ぎが中心となります。出稼ぎ先では技術が認められないと職に就けなくなるので、大工は常に高度な技術を磨きました。その結果「気仙大工」は全国で腕の良さを発揮していったのです。大工が使う道具の中でも「墨壺」は大工一人ひとりで意匠が異なり、凝ったものはそれだけで持ち主の腕の良さを証明するものでもありました。正に気仙大工の「誇り」とも言えるものです。岡本さんはそのお父さんの誇りを銀を使い再現することに成功しました。

東日本大震災を乗り越え・・・

子供たちが独立し、いよいよ本格的にアートクレイシルバーを始めようと思っていた時・・・東日本大震災が起きました。津波により岡本さんの自宅は全壊。アートクレイシルバーの道具一式、今までに作った作品、自宅にあったものは全て流出してしましました。岡本さんも家族も避難生活を続け、大親友は未だ消息が分からない状況。苛烈極める状態の中、一時は作品を作ること自体が困難に思えました。しかし、仲間たちからの応援がありその年の「パールジュエリーコンテスト」に出品するための作品作りに取りかかることができました。その作品とは、行方不明の彼女をイメージした指輪でした。そして、その指輪で見事入選を果たしたのです。「親友はきっと受賞を喜んでくれていると思います。」大きな悲しみを作品を作ることで昇華し、乗り越えた岡本さん。今日も新しいアートクレイシルバーを生み出しています。

時間とともにアンティーク調に変化― シルバーアクセサリーの魅力

銀はゴールドやプラチナより不安定な原子で構成されています。しかし、それこそがシルバーアクセサリーの魅力といえます。それは、時間とともに「いぶし銀」と呼ばれるアンティーク調の落ち着いた色に変化することです。岡本さんのモチーフも愛用することで陰影が濃くなり、より温もりが感じられる風合いに仕上がります。岡本さんが創り出す作品は、繊細なラインが特徴のバラから細かな部分にまでこだわった大工道具まで幅広いものです。特に珍しい大工道具のモチーフは人気があり、展示会ではじっと手に取ってみる人が絶えないと言います。特に男性から高評価で、女性からは「(相手の男性に)プレゼントしたい」という声が多いそう。使い込むほど変化を遂げるシルバーアクセサリーは、所有者にとって特別な逸品となっていくことでしょう。

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